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「菌っていうのは、その日ごとに機嫌が違うんですよ。やはり生き物ですからね。例えば昨日は5時間でちゃんとヨーグルトになったのに、今日は4時間、明日は6時間というように。だからこう、いかにベストなコンディションで飼ってあげるかという点が大切なんです。毎日ご機嫌を伺うといいますか、ほんともうペットみたいなもんですね。愛着をもって接しています(笑)」。
コーカサスヨーグルトの開発に携わった木全氏は語ります。グルジアの家庭で実際に作られているヨーグルト(発酵乳)を、日本の食卓へ…というコンセプトのもと、新商品開発がスタートしたのはかれこれ3年前のことでした。ひとつのヨーグルトが開発され、店頭で皆さんのお目にかかるまでには、いったいどのような発見があり、どれだけの苦労、そして喜びがあったのでしょう?ここでは、生き物を相手にする仕事、ヨーグルト開発の難しさや楽しさ、そして製品に込められた開発者たちの様々な思いをご紹介しましょう。 |
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そもそも、協同乳業がコーカサスヨーグルトという製品を生みだしたのは1982年のこと。コーカサスとは黒海とカスピ海に挟まれた、グルジア、アゼルバイジャン、アルメニアの3国にまたがる地域を指し、シルクロードの交易地点として知られています。比較的温暖な気候と大自然に恵まれたこの地域は、発酵乳の発祥の地としても知られており、その歴史は古くマホメットの時代にまでさかのぼるとも言われています。以前よりこの地域の発酵乳に注目してきた協同乳業が、コーカサス地方の中でも、今回特にグルジアに注目したのには理由がありました。
「トルコ、ギリシャ、イスラムと文明の発祥地には、必ず発酵乳があった。そんな、世界にいい食べ物を伝播させた発信地のひとつであるコーカサスには、前々から関心を持っていました。
さらに、グルジアというのは世界にも名だたる長寿国なんです。ソ連時代から長寿の研究センターのようなものがあるんですが、そこではグルジアの発酵乳が長寿の研究対象として何種類も採取されているんですよ。 |
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そういった健康面での理由と、あとはもちろん味ですよね。」と語るのは開発部長の常川氏。とはいえ、グルジアの発酵乳と日本のヨーグルトに、そんなに大きな違いがあるのでしょうか?それを明確にしていくために、まずは現地より発酵乳のサンプルを取り寄せるところから開発は始まりました。 |
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グルジアで実際にどのような発酵乳が食べられているのか?この点をまず明らかにするために重要になるのが現地からのサンプル。しかし、発酵乳は生き物、つまり時間とともに変化していくものだけに、サンプル解析もひと苦労だったと研究所の農学博士、今井氏は語ります。
「まずは、下調べということでサンプルを取り寄せまして。でも、サンプルというのは、日にちが経過した状態で届きますから、乳酸菌の数も変わっていますし、味もね。ちょっと酸っぱかった(笑)。こればかりは、実際に現地で食べてみないことには解りませんからねえ。とにかく、1回グルジアに行ってちゃんと見てこようと。もちろん、何も解らないままで現地調査に行くよりは、ある程度学習していったほうが…ということで、サンプル内にどんな乳酸菌がいるのかを一つひとつ調べていきました」。
この、乳酸菌を一つひとつ調べていく作業をスクリーニングといいますが、一言にヨーグルトとはいえ、果たしてその中にどれくらいの乳酸菌がいるか、皆さんはご存知でしょうか? |
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一般的に、ヨーグルトの中には数十億個にものぼる乳酸菌がいると言われています。スクリーニング作業の詳細説明は後の項目にゆずるとして、数多くの乳酸菌をピックアップし、実際にグルジアへ現地調査に飛び立ったのは、開発スタートから1年以上も経ってからのことだったといいます。 |
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首都トビリシまで片道約27時間、そこから道なき道を約5時間と、グルジアへの道のりは想像以上に過酷なものでした。現地の家庭に、実際にステイしての現地調査にまず求められたのは、“体力”だったといっても過言ではないでしょう。
「もう、浴びるほど自家製ワインをいただきました。グルジアにはお客さんをすごく大切にするという民族的な気質があって、まずは酒をもっておおいに振る舞うと。お互いに相当飲んでファミリーにならないと、なかなか心を開いてくれないんです。10分に1度のペースで乾杯があって、その度に杯をあけないといけない。二日酔いを通りこして4日目くらいにお陰様でファミリーになれまして(笑)」。(今井氏)
現地の発酵乳を採取する調査と、現地の文化を吸収する調査、2回の現地調査を通して得たもの、それは数々の驚きと発見だったといいます。 |
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「何よりまず驚いたのは、日本の常識がいっさい通用しないというおおらかさですね。調査に発つ前に、どんな種類の牛を、どういう方法で飼っているのか?とか、いろいろ質問を考えてたんですが、行ってみると黒も白も茶色い牛もいる。種類なんてあまり関係ないようで、もう野牛といいますか(笑)。日本ではきちんと柵をつくって飼ってますが、あっちでは平気で道ばたや町中を牛がブラブラしてるんですよね。正真正銘の放牧ですよ。昨日は隣の牛が、今日はウチの…っていう感じで。日本だと事件ですよねえ(笑)」。
こうしたグルジア人気質を知り、食生活を共にしていく中で、もちろんグルジア発酵乳の本質を知るための様々な発見もありました。「現地の学者さんにもお話しを聞いたんですが、グルジアの発酵乳とヨーグルトは明らかに違うものだと言うんです。グルジア人にとっては、それだけ文化的な誇りなんですよね。味も明確に違い、ヨーグルトは少し鉄のような後味がするが、グルジアの発酵乳はミルキーで最後まで美味しいんだと。でも、なかなかそのような味に巡り会う機会がなかったんですよね。しかし、毎日数多くの発酵乳を食べているうちに、ようやく私たちも出会うことができたんです。彼らの言う本当のグルジア発酵乳の味に」。
現地の味を実際に体験し、現地の文化や空気に触れることで、グルジア発酵乳の本当のおいしさを痛感したという今井氏。実はこの体験が、後の開発に新たな課題を投げかけていくことになるのでした。 |
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