若々しい体づくりのために摂りたい「アルギニン」、
健康や美との関係を管理栄養士が解説!

「アルギニン」という栄養素を知っていますか?一度は耳にしたことがあっても、「実際どのような働きをするのかわからない」とか、「男性向けの成分なのでは?」という方も多いのではないでしょうか。
実はアミノ酸の一種であるこのアルギニン、女性にとってもうれしい働きをしてくれることがわかっています。体重・体脂肪の減少をはじめ、代謝促進、疲労回復や免疫力アップ、さらには髪や肌の健康にまで関わってくると聞いては、見逃す手はありません!日常的にワークアウトなどを取り入れながら、食事にも気を使う、美と健康に意識の高い人たちが着目している話題の成分「アルギニン」について、管理栄養士の麻生れいみさんに伺いました。

体を構成する大切な栄養素「アルギニン」の働きとは?

アスリートをはじめ、体づくりに積極的に取り組む人たちが大注目している栄養素「アルギニン」とは、人間がもともと体内にもっている非必須アミノ酸の一種。人により生成量は異なりますが、誰もがもっていて、性別による差はないとされています。ところが、年齢を重ねることによってアルギニンの体内での生合成量が減少し、40歳では10代の頃の半分以下に低下してしまいます。

アルギニンは、運動や手術などで体力が消耗したときの回復に使われるように、アンモニアの増加を抑えて疲労回復をサポートしたり、成長ホルモンの分泌を促進し、脂肪燃焼・筋肉増加に働きかける成分。そのため、生合成力が落ちてくると疲れが取れにくくなるばかりか、トレーニングしてもなかなか筋肉がつかないといった状態に陥ります。

「アルギニン」は女性にとってもうれしい成分

アルギニンは、スタミナドリンクやプロテインの成分としても使われることが多いため、筋トレをされる方には馴染みのある栄養素。脂肪代謝や筋肉強化作用のほかにも、成長ホルモンが食欲を抑える働きをするので、食べすぎによる肥満を防いでくれます。また、体内の一酸化窒素(NO)産生を高めて血流を改善し、動脈硬化や心筋梗塞を予防したり、血管をしなやかに保って生活習慣病のリスクを低減するなど、男性にはもちろん、女性にとってもうれしい成分なのです。
また、アルギニンは体内で免疫細胞である「マクロファージ」の活性化に働きかけるため、細菌やウィルスに対する免疫力を向上。病気に負けない強い体づくりにも効果が期待されています。
※マクロファージ…血液中に存在する白血球の一種。体内に侵入した細菌やウィルスを食べて、消化・殺菌する働きをもつ。

アンチエイジング成分「ポリアミン」を腸内で作り出す働きも

アルギニンの働きは、それだけではありません。すべての生物の体内に存在し、細胞の分裂や組織修復を助ける「ポリアミン」という成分がありますが、加齢にともない、ポリアミンの生合成能力や臓器・組織中の濃度が低下してしまいます。それを補うのが、アルギニン。体内に取り込んだアルギニンをもとに、腸内で生合成されたポリアミンが、小腸から吸収され、血液とともに全身の細胞に運ばれていきます。「遺伝子の潤滑剤」ともよばれるポリアミンには、老化によって引き起こされる疾病のリスクを下げるばかりか、角質層を保湿して肌荒れや傷んだ髪をリカバリーするといったアンチエイジング効果をもつといわれているのです。年を重ねても、若々しさをキープしたい人には、欠かせない成分といえるでしょう。

「アルギニン」を豊富に含む食品群

老化のスピードを穏やかにし、健やかで美しい毎日を過ごすためのサポートをしてくれるアルギニンですが、効率よく摂取するには、次のような食品が有効です。

《アルギニンを多く含む食品(食品100gに含まれるアルギニン量)》
食品名 アルギニンを含む量
ゼラチン7.9g
湯葉(干し)4.3g
かつお節(加工品)4.3g
凍り豆腐4.3g
煮干し3.6g
ごま(乾燥)2.9g
きな粉(脱皮大豆)2.8g
大豆(乾)2.7g
くるまえび(養殖・生)2.0g
油揚げ2.0g
若鶏肉(胸・皮なし・生)1.5g
ニンニク1g
豚肉(ロース・赤身・生)1.5g
納豆(ひきわり)0.95g
日本食品標準成分表 2015年版(七訂)

効率のいい「アルギニン」の摂り方、お教えします!

①1日に8g のアルギニンを摂る 1日8gの摂取で、成長ホルモンの分泌促進、筋肉量の増加や体重・体脂肪の減少、血管拡張などの効果が期待できます。しかし、アルギニンを多く含むタンパク質は消化吸収率が決まっていて、1回の食事で摂れる量は20~25gといわれています。そのため、一度にたくさん食べるより、3食に分けて摂るほうが、しっかり体に吸収できてムダがありません。 ②運動の前後で摂る 運動の前後のタイミングでアルギニンを摂ることで、疲労感の軽減につながります。 ③就寝前に摂る 寝る前に摂ると成長ホルモンの分泌を促し、代謝促進効果が期待できます。ただし、胃に消化の負担をかけないよう、プロテインドリンクやアルギニン入りのヨーグルトなどの軽いものを摂るとよいでしょう。

「アルギニン」+αの相乗効果で、さらに効率UP!

アルギニンと一緒に摂取することで相乗効果が生まれる成分があります。それが、「オルニチン」と「シトルリン」です。

①「アルギニン×オルニチン」でしなやかボディに
さらに効果UPをめざすなら、オルニチンと一緒に摂ることをおすすめします。オルニチンはシジミやチーズなどに含まれている成分。アルギニンと同時摂取することで、筋肉増強や脂肪燃焼作用が高まるとされています。

②「アルギニン×シトルリン」で「むくみ」対策
スイカやメロン、きゅうりなどに含まれる「シトルリン」はむくみを防ぐ効果をもち、アルギニンと同時に摂ることで血流を促進し、パフォーマンスの向上が期待できます。

相乗効果を高めるおすすめの献立としては、
・ゴーヤチャンプルー(ゴーヤ=シトルリン×豚肉=アルギニン)+シジミの味噌汁(オルニチン)
・鶏肉(アルギニン)、ズッキーニ(シトルリン)、チーズ(オルニチン)のグラタン
などが挙げられます。身近な食材でアルギニンが摂取できるのも、うれしいところ。

ムリな食事制限で体重を落として見た目だけ細くなっても、健康を損ねたり、イライラしたり、肌も髪もボロボロに…。そんなダイエットはもう時代遅れ。いま美しいといわれる女性は、体の中から健康で、前向きに輝いている人。美しさと健やかさの両面からサポートしてくれるアルギニンを、毎日の暮らしに取り入れてみませんか。


管理栄養士
麻生れいみ(あそう れいみ)

大手出版会社の編集・ライターを経て、服部栄養専門学校栄養士科卒業。管理栄養士として、大手企業の特定保健指導・栄養相談、病院の臨床研究においての栄養療法を監修し、医薬に頼りすぎない新しい治療法をサポートしている。
日本抗加齢医学会会員/日本栄養食糧学会会員/食育栄養インストラクター


   
関連記事
       
    page top