
美容における上位概念は“健康”

コロナ禍で人と会う機会が減る中、美容とどう向き合うかを考えられた方は多いと思います。しかし、結局のところ健康が美容における上位概念であるわけで、健康というベースの上に成り立っていることは明白です。衛生環境が劣悪で、生きていくのがやっとであったり、明日死ぬかもしれなければ、誰も美容に目を向けないはずなのです。
そのため、実際にこのパンデミックの中にある私達も大多数がマスクで顔のほとんどを覆うという、そもそもの美容の概念とは離れた生活を当たり前に送っています。
リモートワークやオンラインミーティングなどが当たり前になり、コロナ終息後もある程度この生活様式は残っていくことが予想されますが、それは美容という面についても同じと言えます。今までは実際に人と会うためにする社会性が高いものだったメイクアップも、人と人との距離が生まれることで、どんな距離感の誰に対して、どう自分自身を魅力的に見せるのか、思考の変化がはっきりと生まれたはずです。
ICT の技術を使ってデータを有効活用し、価値観やニーズに合わせて都市を運営していくスマートシティの構築や、AI やロボットの手を借りて快適な生活を送る社会 Sociaty5.0 への変革が目指す未来社会であるとされる中、実際に会う必要がなければ、AR やVR 等を使って美しく装うことも可能なわけで、オンライン化が進んだパンデミックは美容にとっても概念が変わる0(ゼロ)年となったはずなのです。
その反面、同じ空間で身体のアクションや口の動き、頬の動き等を見て相手の感情を察知することは、人類が生存するための術として当たり前のように DNA に組み込まれていると思います。例えマスクがスタンダード化したり、会わないコミュニケーション法が確立されたとしても、人の根本の習慣をがらっと変えることは 100 年 200 年という時間が経たない限り難しいのではないでしょうか。感情を察知するのと同じように、美しさについても血色や姿形の視覚的な情報と体全体の動きを見て私たちは判断しているのだと思います。
時代が進んでも、すぐには受け入れられない事実があるのが人間の面白いところで、その狭間をどう解釈するかというのがまさに今の時代なのでしょう。
美しさを司る“皮膚”は第三の脳

さて、健康が美容における上位概念というお話をしてきましたが、皆さんは『皮脳同根』という考え方をご存知でしょうか。人が受精卵として細胞分裂を繰り返しながら成長する過程でできる「胚葉」という構造があります。これは、外胚葉、中胚葉、内胚葉という3 つの細胞層から成り立ち、ここからそれぞれの器官が形成されていくのです。
この3つの細胞層のうち、外胚葉から作られるのが中枢神経や末梢神経、感覚器であり、脳と皮膚です。2 つは同じ胚葉をルーツにしており、発生学上同じだという考え方です。ストレスで脳が疲れていると肌荒れが悪化したり、逆に腹痛時に手でお腹をさすってもらうと痛みが安らいだりした経験は皆さんにもきっとあるでしょう。脳と皮膚は同じルーツと聞いて、イメージがしやすいのではないでしょうか。
別の切り口から捉えた、『皮膚は第三の脳』というキーワードについてもお話しします。人間の皮膚には「セロトニン」「ドーパミン」「アドレナリン」などの脳内物質を受け取る皮膚受容体があるため、幸せや意欲などの感情を肌で感じて作り出すと言われています。
例えば、「湯船に浸かってホッと一息」の感覚と言えば分かりやすいでしょうか。また、化粧品の心地よいテクスチャーや伸びの良さは、皮膚に備わる神経伝達物質が脳へ好影響を与えるため美しさに繋がると考えられており、研究が盛んに行われています。まだ発見されていない皮膚の力はこれからたくさん発見されていくと思います。人間の外側を覆い、見た目の美しさに影響する皮膚には、様々な神秘が眠っているのです。
第二の脳は…“腸”である

一方で、第二の脳が、実は腸と言われていることは、とても興味深い話です。腸には多くの神経細胞が存在し、感情にも深く関わっていると言われています。また、脳のストレスが腸に反映されたり、その逆もしかりです。精神的なストレスを感じると胃腸がキリキリ痛む・・・ということはそこに起因すると考えられています。
然るに、腸の健康状態が皮膚にも大きく影響し、つまり美容と密接に繋がっていると言えるのです。美容というと外見的なことばかりに気をとられがちですが、美肌を保とうとすると、やはり腸内環境の健全化がとても重要になってくるのです。この点で言うと私は今、ポリアミンに注目しています。
『細胞の元気さを維持する物質』と言われ、アンチエイジングにも好影響があるという研究結果も報告されています。ポリアミンは日常の食べ物から摂取できますので、一つのインナー美容法として是非ライフスタイルに取り入れてみてはいかがでしょうか?
ポリアミンは細胞の増殖に関与していることから、新陳代謝にも欠かせないため、ターンオーバーの正常化のために美容成分としてスキンケアに配合されるなど注目を集めています。
腸と肌、双方から取り入れられるというのが興味深いですね。
第二の脳である腸、第三の脳である皮膚・・・。
腸と脳、そして皮膚と脳が繋がっていると考えると、美しさとは 3 つの器官全てが健やかな状態に備わると考えるのが良いでしょう。皮膚と腸へのケアを心がけながら、お肌のケアをすることによって、各器官だけでなく、双方にとっても良い影響をもたらします。
やはり、全てのキレイは身体全体の健康を軸におくことで始まるのです。