愛知県西尾 小笠原牧場
おいしい愛知牛乳の生乳を生産

100年続く
酪農を目指して

愛知県内の生乳でつくられる、おいしい愛知牛乳。
その生産者として、地域社会に貢献する資源循環型の乳牛育成に取り組み、若い人たちに魅力ある都市型酪農企業を目指す小笠原牧場を訪れました。

愛知県西尾に、飼育頭数400頭を超える、西三河地域最大規模の牧場がある。

昭和30年代に牧場を拓いた小笠原家八代目の父は、収穫後の閉農期に酪農家が周辺の田を借りて飼料用稲を育てること(期間借地)を提唱して、テレビ番組にも出演した。その姿に憧れて"九代目酪農家"を目指した小笠原正秀さんは、父を超えるオンリーワンの牧場を模索した。

乳牛の改良に積極的に取り組み、全日本ホルスタイン共進会でも優秀な成績を収めた。地域と共生する資源循環型酪農の確立を目指し、自社オリジナル乳製品の開発も進めた。
農業法人としての明確なビジョンを持って酪農の未来を見つめる小笠原牧場に、ご案内する。

意義 乳を搾るだけの
酪農では、寂しい。

小笠原牧場を訪れると、その大きさに驚かされる。複数の牛舎が道路を挟んで連なり、青空の覗く屋根で繋がれる。フリーバーンの牛舎内では大量の牛たちが自由に闊歩し、搾乳時には巨大なロボット式搾乳システムへと向かう。

もともとは60頭のつなぎ飼い牛舎に屋根を張って、牛を増やしたら空き地に牛舎を作ってまた屋根張って、そのうちフリーストールだと無理があることに気がついてフリーバーンにしてと、増改築の歴史を重ねるうちに、このような姿の牧場になりました。

もちろん、これだけの広大な牧場を、家族だけで支えるのは無理がある。小笠原牧場では正社員・パートを含む10数名の従業員を雇い、会社組織として牧場を運営している。

本来、酪農の基本は家族経営なんだけど、やがて僕と嫁さんの2人になってしまうことに気がついた。それなら、人に来てもらって給料が払える仕組みにすればいいと決断して、牧場を法人化しました。
会社としてやっていくなら、みんなで目指す目標がほしいじゃないですか。今までの小笠原牧場はただ牛の乳を搾り、畑に糞尿を撒いてきただけだった。今は、地域社会に貢献する資源循環型の酪農企業を目指しています。

貢献 都市近郊だから、
地域に還元できる。

フリーバーンの一角が小高い山のようになっていた。そこに牛たちが気持ち良さそうに寝そべる。その傍らをロータリーが行き交い、また新たな山をつくる。移動する山が、資源循環型酪農の要となっている。

この山は、牛の糞尿とオガクズで出来ています。本来なら牛の糞尿は水分が90%くらいあるのですが、オガクズを混ぜ合わせて水分を60~70%にし、空気を含ませ、発酵させることができます。それによって有害な菌の繁殖を抑え、匂いの無い良い堆肥をつくることができます。もちろん、牛にとっても爪を痛めず、健康な牛が育ちます。

牛たちの粗飼料は牧場内の耕作地で栽培し、足りない分は「期間借地」の稲WCSで賄う。穀類などの飼料は、近隣の食品工場から出る大豆粕類や福祉施設から出る残飯を引き取り、代わりに牛舎から出る発酵堆肥を提供する。西三河では、地域の副産物を資源に変える賢い循環サイクルが機能する。

うちの堆肥を耕作に使えば、そのお米は、間違いなくおいしくなる。食べた人は誰でも、おいしいと褒めてくれます。発酵堆肥から地域のおいしい有機米が出来て、うちは飼料を還元してもらう。お互いに支え合う仕組みで、資源循環型酪農が成り立つわけです。

創出 「酪」農で、
乳の価値を再発見する。

西三河で搾られた生乳は、地域限定牛乳「おいしい愛知牛乳」となり、多くの消費者から支持されている。

消費者の嗜好が多様化し、メーカーは消費者から選んでもらえる牛乳を出さなければいけないし、酪農家は選ばれる乳を搾らなければいけない。僕がいつも言うのは、酪農のファンづくりなんだよね。ファンをつくることに、僕らは熱心じゃなかった。

小笠原牧場では、新鮮な生乳をフレッシュチーズやジェラートに加工し、「酪」ブランドのオリジナル乳製品として販売している。

もともと酪農の「酪」は乳製品の加工まで含む言葉なんだけど、乳を搾るだけが酪農じゃないという想いが込められたブランド名です。
牛は人が食べることができないものから牛乳という素晴らしいものを与えてくれる。この力を活かすべく、牛に地域の副産物を与え、おいしい乳製品を作って消費者に伝える。そうすることによって、生乳の価値を再発見してもらうことができるし、酪農のファンを増やすことができるわけです。

永続 酪農は、牛と人間との
共同作品。

小笠原牧場では、地域の子供たちの牧場見学も積極的に受け入れている。

僕は、食と命の大切さを伝えるのに、酪農以上のものはないと思う。牛の成長は早いから、牧場見学に来た子供らは、子牛が2年で子供を産む姿を見るわけです。そこから、生命と向き合うことを学んでもらうことができる。牛はどこまでも正直だから、気持ちが良ければたくさん乳を出すし、良くなければ乳は出ない。 酪農っていうのは、牛と人間との共同作品なんですよ。牛と人間が一体となって作り上げていく。その素晴らしさを、是非、多くの方々に知ってもらいたい。

牛を、地域の子供たちを、どこまでも愛する小笠原正秀さん。その包容力と取り組みに、小笠原牧場への入社を希望する若者たちが後を絶たない。

僕にとって、社員が増えるということは、新しい家族が増えるみたいなものだ。そうなりゃ、ほかの酪農家の方々と同じように、家族の誰かが家業を繋いでいけばいい。安定した会社組織にしていれば、誰かが意志を継いでいき、100年続く酪農になる。そんな想いを込めて、僕は100年続く酪農企業を目指しています。

規模の大小は違えども、牛を愛し、生命の糧を育む酪農家の取り組みは変わらない。

酪農家Profile  小笠原牧場

所在地
愛知県西尾市
牧場の規模
経産牛 290頭/全頭 420頭
生乳が使用される
協同乳業の商品
おいしい愛知牛乳
一言メッセージ
乳の価値向上は、酪農家が唱えてこそ、説得力があります