愛されるブランドには、長年育まれてきた物語があります。
食卓に健康なおいしさをお届けするメイトーブランドにも、
豊かな自然の恵みを損なわずありのままに伝えたいという
多くの人々の想いが、幾重にも重なり合い綴られています。
進化し続けながらも、真に価値のあるものは大切に守り通し、
今日まで黙々と語り継がれてきたメイトーブランドの物語。
その1つ1つに込められた想いをシリーズでお伝えします。
Meito Story 03
メイトーブランドの協同乳業は、自然の恵みをありのままを食卓に届けるだけでなく、健康な毎日を支える新しい提案を続けるブランドでもある。例えば、生きて大腸まで届き、増殖するビフィズス菌"LKM512"を活用し、特定保健用食品(以下、トクホ)として認可されている「おなかにおいしいヨーグルト」は、この代表のようなオリジナル製品だ。このような機能的な付加価値を積極的に研究し、製品に活かすための研究所が協同乳業東京工場に併設されている(1992年~)。
現在の研究所の役割は大きく次の3つである。
・腸内環境コントロール技術の開発と健康長寿の研究
・乳関連成分の新規応用技術の開発
・商品の一般分析、安全性確認、原材料分析など
その中でも、「腸内環境のコントロール技術の開発と健康長寿の研究」というテーマでは、世界的にも独自性の高い成果を上げている。
協同乳業は80年代より自然の力を活かして健康に働きかける乳製品の開発研究を続けてきた。これまでに、日本で初めて、乳清飲料「ミルフル」を開発・発売(1984年)し、ケフィア(ヨーグルトきのこ)の工業製品化に成功するなど、乳の潜在的なチカラを引き出し、国民の健康促進に貢献する独自の研究開発を進めてきた。
このように健康への貢献に取り組み始めていた協同乳業は、食品による生活習慣病一次予防の重要性、科学的根拠に基づく情報を表示した食品の提供の必要性が問われ始めた1990年台、マーケティング面での要請もあり、その象徴となるような「トクホ」製品を自社ラインナップに加えるべく、社内プロジェクトをスタートさせた。
様々な健康素材が検討される中でプロジェクトは、食品から大腸内の細菌叢(さいきんそう)を整える"プロバイオティクス"という分野に着目。特に"LKM512"というビフィズス菌に見込みがありそうだというところまではコマが進んだ。
プロバイオティクスとしての有効性を検証していく中で、LKM512が、胃酸でダメージを受けずに大腸まで到達する能力が高く、さらに大腸内で増殖するという特性を持つこともわかってきた。これらのデータは、トクホ取得には必須では無かったが、作用メカニズムが解明されている食品をお客さまに提供すべきであるとの考えのもと、それらの現象も一つずつ科学的に研究し、海外学術誌に発表していった。
※LKM512・・・「Bifidobacterium animalis subsp.lactis(ビフィドバクテリウム・アニマリス 亜種ラクティス)で、菌株名が「LKM512」
英文での論文、提出資料の作成等課題を一つ一つクリアし、「このヨーグルトは生きたビフィズス菌を含み、腸内のビフィズス菌を増やし、 腸内環境を改善し、おなかの調子を整えます。」という許可表示で、トクホ商品を発売するに至った。
社内ではトクホとして商品化出来たことにより、LKM512は研究対象としても一段落ついた感があった。しかしながら、研究員らは、被験者の便を回収し分析している過程で、LKM512を摂取することによる便状態の変化から、直感的にこの菌にはもっと秘められた可能性があるのではと考え、上司を説得しLKM512の研究を継続することとなった。また、糞便中の代謝産物を網羅的に解析するメタボロミクスに代表される、新しい技術も積極的に導入した。
研究を進める中、LKM512の持つ様々な効果を立証する論文が多数発表されている(トクホ研究を始めてから、既に40報近くの科学論文を発表している)。その中でも、競争的資金の獲得による質の高い研究により、LKM512の長期間の投与でマウスの寿命が伸長するという研究成果が科学ジャーナルに掲載され、世間に大きなインパクトを与えることとなった。 その後も、LKM512が腸内でどのような働きをしているかを解明すべく研究を進める中、大腸内でポリアミンを増やすことにより、体内での様々な生理活性作用に影響を与えていることを見出した。
LKM512は、大腸内でポリアミンを増やし、生体に様々な効果をもたらす。協同乳業研究所は「腸内細菌に体に良いものを産生させて、健康増進を導く食品を創造する」というミッションをより明確にしている。近年、アンチエイジングの分野で"ポリアミン"の機能性が大きく注目を浴びるようになっているが、このミッションの現時点での最大の成果が、このポリアミンを腸内細菌につくらせて生体に供給する技術を開発したことである。この成果で、研究員は、サイエンスの世界ではその歴史と権威で広く知られている国際的学術集会であるゴードン会議(ポリアミン)での講演を依頼されたり、ハイ・インパクトジャーナルであるScience姉妹誌(Science Advances)にメカニズムを解明した論文が掲載されたりするなど、世界的にも高く評価されている。すなわち、腸内細菌の産生するポリアミンの保健機能に関しては、自他共に認める先駆者且つトップランナーである。現在も、数多くの大学等の研究機関との共同研究を実施しており、ポリアミンの研究成果を通して、人々の健康増進に貢献できると確信している。
「腸内細菌に体に良いものを産生させて、健康増進を導く食品を創造する」というミッションを明確にした協同乳業が次に着目し、製品化したのが「ミルクde水素」だ。といっても、昨今流行している「水素ガスそのもの」が含有されている製品ではない(この点はよく誤解されてしまう)。腸内細菌が水素ガスを産生することは古くから知られていたが、水素ガスに生理機能があることは誰も考えもしなかった。ところが、2007年に水素ガスが強い抗酸化作用を有し、脳梗塞の軽減化に効果を発揮するという論文がNature Medicineに発表された。その後も、それを追随する水素ガスの生理機能に関する研究成果は増加の一途を辿っており、メカニズムに関しては議論中であるものの、水素ガスに保健効果があることはほぼ間違いない。一方で、水素ガスを摂取するために水素ガス溶解水(水素水)が市場に氾濫していたが、水素ガスの特徴からして、市販ボトルでは水素ガスが抜けて消失してしまう、例え特殊容器で封入したとしても開封後はすぐに消失することが問題視されていた(国民生活センターもこの点を問題視している)。そこで、松本らは腸内細菌に水素ガスを産生させる方が効率的に生体に供給できると考え、腸内水素ガス産生飲料の研究開発プロジェクトを慶応義塾大学医学部と共同でスタートさせた。「なぜ、突然、水素ガス?!」と突拍子もない研究テーマのように思われることが多いが、「腸内細菌に機能性物質を作らせて生体に供給する」という当研究グループのコンセプトと合致しており、研究チームはこれまでのノウハウを活かしつつ、必要に応じてアレンジした研究手法を選択することで、世の中には存在しない新規機能性飲料を創出する自信はあった。
地道に実験を繰り返した結果、乳にもともと含まれている乳糖に加え、ガラクトオリゴ糖、マルチトール、グルコマンナンの3つの難消化性成分を腸内細菌の餌として配合すれば、殆どの日本人に対して(93%)、水素ガスを産生させることに成功した。
腸内に生息する細菌を活用して大腸内で水素ガスを発生させる「ミルクde水素」。その産生は成分に水素ガスを溶かしただけの水素水と比べて圧倒的に長時間持続する。従来のブームに乗った"マーケティングファースト"な「水素ガス封入製品」とは一線を画す、"乳"のチカラを引き出すことを使命とするメイトーらしい新商品となった。
腸内菌叢は、未だ半数(8割以上ともいわれている)が未知の菌とされている。これらの菌叢が産出する物質が体内でどのような作用をするかは殆どわかっていない。
シャーレの中の細胞に対して有効だからといって、生体内で作用しているとは限らず、解明しなければならないことは山ほどある。決して、試験管やシャーレ内の実験だけで、安易に"「効果がある」と発表することは決してしない。誰もやりたがらないヒトの糞便等を徹底的に解析し実験してから科学ジャーナルに発表、それが掲載されてから商品化することで、間違ったものを消費者に提供することはしない。
そうした慎重さとチャレンジ精神とのバランスの上に、独創的な技術開発を追究し続ける研究者達によって、メイトーブランドは育まれている。